法律ABC

新規ビジネスと弁護士法72条ー近時の裁判例を踏まえて

1 事件性要件の要否に関する諸相

(1)はじめに

 先般,法務省から「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」という文書が発出されました(以下,「令和5年法務省AI等文書」といいます。)。AIによる契約書チェックサービスを企業に提供する行為は弁護士法違反ではないか,という疑問に一応決着がつきました。

 ところで,弁護士法72条は,弁護士でない者が「その他一般の法律事件に関して」法律事務を取り扱うこと(いわゆる非弁行為)を禁止しています。法務省は,この「法律事件」といいうるためには,争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある,との見解を採っているとされますが,日弁連や裁判例は必ずしもそう解釈しません。いわゆる事件性要件の要否,という弁護士法72条の一大論点だそうです。よい機会なので,近時の裁判例を踏まえ,現時点における実務上留意すべき点について,考えを整理しようと思います。なお,本稿は事件性要件について見解の理論的な正しさを追求するものではないことを予めお断りします。

 だらだら書いておりますので,結論部分を先にお読みにになりたい方は最後の「(2)実務上の留意点」をご覧ください。

(2)事件性の要件要否に関する3つの見解

【事件性要件必要説】(法務省の見解)

 「その他一般の法律事件」といいうるためには,争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある,との見解です。平成15年12月の司法制度改革推進本部・法曹制度検討会(第24回)において示されて以降,法務省の見解とされています。

【事件性要件不要説】(日弁連及び一部の裁判例の見解)

 これに対し,日弁連は事件性不要説を採っています。

 「『法律事件』とは,法律上の権利義務に関し争いや疑義があり,又は,新たな権利義務関係の発生する案件をいうもの」という定義です(日弁連調査室編『条解 弁護士法(第5版)』〔弘文堂・令和5年〕647頁)。弁護士の著書では概ねこの事件性不要説が採られており(高田正彦『弁護士法概説(第5版)』〔三省堂・令和2年〕345頁,深澤諭史『弁護士のための非弁対策Q&A』〔第一法規・平成30年〕35頁),多くの裁判例も同様の定義を採用しています。


(2) 「法律事件」について
 弁護士法72条本文前段にいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は、新たな権利義務関係の発生する案件をいうと解される。
 本件契約は、原告が、被告に対し、原告が論文捏造事件に関与したとの事実を摘示し、原告の名誉を毀損すると主張する本件各記事をウェブサイト上から削除するための業務を依頼するものである。そのため、ウェブサイト運営者側の表現の自由と対立しながら、これにより本件各記事が削除され、原告の人格権の侵害状態が除去されるという効果を発生させることになるのであるから、単純かつ画一的に行われるものとはいえず、新たな権利義務関係を発生させるものである。
 したがって、本件において、被告がウェブサイトの運営者に対して本件各記事の削除を求めることは、「法律事件」に該当する。

★インターネット上の投稿削除請求非弁事件―東京地裁平成29年2月20日・判タ1451号237頁

★電気設備保安業解約通知代行非弁事件―東京地裁平成28年7月25日判決・判タ1435号215頁
★電力会社との電気料金交渉代理非弁事件―東京地裁平成18年2月20日判決・判タ1250号250頁
★非公開株式買付け交渉代理非弁事件―広島地裁平成18年6月1日判決・判時1938号165頁

【中間説?】(一部の裁判例の見解)

 後掲最高裁平成22年7月20日判決は「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」であることを理由に「法律事件」該当性を認定しました。この最高裁判決を契機として,事件性必要性のいうような争いの「具体化又顕在化」までは求めないものの,将来の法的紛争が予測される状況を理由に認定するいわば中間説的な見解を採る裁判例が出てきました。


将来法的紛議が発生することが予測される状況において書類を作成し…

★行政書士の遺産分割関与非弁事件―東京地裁平成27年7月30日判決・判時2281号124頁


将来法的紛議が発生することが予測される状況において控訴人が行った書類の作成や相談に応じての助言指導は…

★行政書士の交通事故紛争処理非弁事件―大阪高裁平成26年6月16日判決

2 裁判例の分析

(1)最高裁平成22年7月20日判決・刑集64巻5号793頁及びその評価

 不動産会社の代表取締役らが,賃貸物件のオーナーから依頼を受けて,賃借人の立ち退き交渉をしたことが非弁行為に問われた刑事事件です。上告人(被告人)は,法務省の事件性必要説を引用して上告しましたが,最高裁は次のとおりに判示しました。

…所論は、A社と各賃借人との間においては、法律上の権利義務に争いや疑義が存するなどの事情はなく、被告人らが受託した業務は弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものではないから、同条違反の罪は成立しないという。しかしながら、被告人らは、多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を、報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ、このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。そして、被告人らは、報酬を得る目的で、業として、上記のような事件に関し、賃借人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて、前記のように賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら、これを取り扱ったのであり、被告人らの行為につき弁護士法72条違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。

★最高裁平成22年7月20日判決・刑集64巻5号793頁

 さらに,本判例の担当調査官は,本判例の立場について次のように述べています。

思うに,「おそれ」や「予想」は,将来何らかの事態が発生する可能性を予測しようとする表現であることから,基準としての不安定さが感じられるのではなかろうか。
…本件において立ち退き交渉が「その他一般の法律事件」に当たることとなるポイントは,将来予測の問題ではなく,現在存在する事情の問題としてとらえるのが相当であるように思われる(いわば未来形ではなく,現在形で表現されるべき問題と考えられる。)。
…本決定のこのような判示については,事件性のような要件を全く必要としないとする立場には立っておらず,争いや疑義が具体化又は顕在化していることまでは要しないとしても,事件性必要説に親和的な立場と理解できるように思われる。

三浦透「弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について,弁護士法72条違反の罪が成立するとされた事例」・ジュリスト編集室『最高裁時の判例Ⅶ 平成21年~平成23年』(有斐閣平成26年)

(2)最高裁平成22年判決後の動向
 以後,最高裁平成22年判決の影響を受けたのか,「将来法的紛議が発生することが予測される状況」を非弁行為認定の理由とする裁判例が現れたことは上述の通りです(★行政書士の遺産分割関与非弁事件―東京地裁平成27年7月30日判決,★行政書士の交通事故紛争処理非弁事件―大阪高裁平成26年6月16日判決)。
 しかしながら,最高裁平成22年判決後も日弁連の事件性不要説を引用する裁判例も多々あります(★インターネット上の投稿削除請求非弁事件―東京地裁平成29年2月20日,★電気設備保安業解約通知代行非弁事件―東京地裁平成28年7月25日判決)。事件類型によって基準を使い分けているようにも見えません。そうすると,最高裁平成22年判決はあくまで事例判断であり,先例的意義がないという日弁連の見解もあながち不当ではありません。
 また,平成22年最高裁判例以降,少なくとも,平成15年の法務省の見解にいう「争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある」という事件性必要説に立つ裁判例は存在しません。実務上は,法務省の見解にあまり裁判所が影響を受けていない現状は留意しなければなりません。
(3)裁判例が違法とする事案の分類
 以上を踏まえ,裁判例で非弁行為と認定された事案を私なりに検討すると,次のような整理が可能であるように思います。
【第1:類型的に弁護士が扱う業務を非弁行為とする例】
  弁護士が類型的に扱う業務を弁護士以外が扱って非弁行為となるのは当たり前の話で,もっとも典型的な非弁行為と言えます。他の士業が越境してしまうケースが多いようです。
★インターネット上の投稿削除請求非弁事件―東京地裁平成29年2月20日
★行政書士の遺産分割関与非弁事件―東京地裁平成27年7月30日判決
★行政書士の交通事故紛争処理非弁事件―大阪高裁平成26年6月16日判決
★建物明渡請求「コンサルティング業務」非弁認定事件―大阪高裁平成28年10月4日判決
★行政書士の離婚交渉非弁事件ー福岡地裁令和3年12月7日判決

なお,弁護士法73条に関する事例ですが,建物明渡請求をするために当該建物の譲渡を受けた者に関する★熊本地裁平成31年4月9日判決・判時2458号103頁も同じ文脈で読むことができます。
 最高裁平成22年判決もこの類型といって差し支えないでしょう。

【第2:法的紛争処理と密接に関連する行為を非弁行為とする例】
 次に,一見すると弁護士業ではないものの,実際には弁護士に指示を出していたり,弁護士の紛争解決能力を騙っていたりするケースです。弁護士でないのに弁護士を騙っているわけですから,事実の全体をみれば非弁と判断されて然るべきですね。


…本件各契約は他人の所有する非公開株式の売却条件交渉を有償で受任するものであり、そのための手段として少数株主権を背景として大塚製薬に圧力をかけるというものである。原告が被告らの委任を受けて大塚製薬の株主総会に出席したことや、原告代表者による類似事案の処理過程において株主をして弁護士に委任して非訟事件を提起させたことなどをみれば、受任者の少数株主権を統一的に行使することやそのための法的手段を執ることも、本件株式の売却条件を有利に導く目的をもった行動として、本件各契約上の事務処理の内容に当然に含まれていたものと解される。
 非公開株式の売買にあって、売却先の選定や売却価格、売却の手続を巡って争いや疑義が生じ得ることは見易い道理であり、売買条件交渉を非専門家が受任すれば委任者又は相手方が不適正な価格による取引を強いられるおそれが類型的に存在する。したがって、これらは実質的にも専門的法律知識と特別の事務処理能力の担保された弁護士に独占させることが国民の利益に適うものと解され、本件各契約は一般の法律事件に関するものに該当するというべきである。

★非公開株式買付け交渉代理非弁事件―広島地裁平成18年6月1日判決・判時1938号165頁


…亡松夫は、別件紛争を抱えて困惑する原告に対して、自己が、法的紛争の解決能力において、あたかも弁護士以上の能力を有しているかのように振る舞って本件顧問契約を締結させ、同契約に基づき、顧問料や個別の相談料・文書作成料等として、弁護士報酬にも匹敵する高額の金員を支払わせていたことが認められる。そして、その事務の内容としても、法律事件に発展していた別件紛争に関する相談・打合せ、司法書士への指導助言、内容証明作成、反訴状・答弁書・抗告申立書等の作成などを行っていたのであるから、これらの行為は、弁護士法七二条本文にいう「報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件(中略)その他一般の法律事件に関して(中略)代理、(中略)その他の法律事務を取り扱」うことに当たるものというべきである。

★エレベータ保守業者の「顧問契約」非弁認定事件―東京地裁平成27年1月19日判決・判時2257号65頁

【第3:既存の契約の変更,消滅を目的とする行為】
 最後に,実務上最も注意すべき類型です。既存の契約の変更や消滅する行為を代行する場合に,非弁行為と認定されているケースがあります(いずれも民事事件ではありますが)。しかも,これらは平成22年最高裁判決後の最近の事例であり,いずれも平成15年の法務省のいう「争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある」という事件性要件必要説からは非弁行為と認定されないような事案です。


(2) 法律事件及び法律事務について
 ア 弁護士法72条本文前段にいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は、新たな権利義務関係の発生する案件をいうと解される。
 本件行為は、原告契約を解除する旨の本件解約通知書を郵送するものであって、原告とCとの間の契約関係を終了させるものであるから、既存の権利義務関係を消滅させるという点において、新たな権利義務関係を発生させる案件であるといえる
 イ 次に、弁護士法72条本文前段の要件として、法律事件に関する「鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務」を取り扱うことが必要とされている。
 本件において、…被告は、ESシステムサービスを導入しようとする客に対するサービスとして、当該客と従前の電気管理技術者との間の委託契約の解除手続を集約して代行していること、本件解約通知書には、従前の受託者との間の委託契約を解除する旨があらかじめ印字されており、必要事項を書き込めば解約通知書として完成する書式であることに照らせば、第三者間の契約解除という法律効果が発生する本件解約通知書の書式については、被告が作成したものと認められる。その上で、被告は、空欄部分や記名押印部分を記入することによって完成した、第三者であるCが作成名義人となる本件解約通知書を、Cに代わって原告に郵送し、その結果、Cと原告との間の原告契約が解除されるという法律効果が発生したものである。
 かかる事情に照らせば、本件行為は、単に本件解約通知書を郵送したという事実行為ではなく、法律上の効果を発生、変更する事項を保全、明確化する行為といえる。
 したがって、被告は、「法律事件」に関する「法律事務」を取り扱ったと認めるのが相当である。

★電気設備保安業解約通知代行非弁事件―東京地裁平成28年7月25日判決・判タ1435号215頁


そして、…電気料金は、当該需要場所にいかなる契約種別が適用されるかによって異なり、その契約種別については電気需給契約の内容となる電気供給約款にその定義規定が設けられているのであるから、いかなる契約種別が適用されるか否かは電気需給契約の内容として需要家と電力会社間の権利義務の有無ないし範囲に関する事柄であるというべきである。
…電気使用設備及び電気使用状況という客観的な事情を考慮して判断されるものであるといっても、それによって電灯か付帯電灯かが一義的に明らかになるものであると解することはできない。すなわち、…電灯が動力を使用するために直接必要であるか否かの判断に当たっては、客観的な電気使用設備や電気使用状況を前提としつつ、直接必要とはいかなる場合をいうのかなどについて規定の文言を解釈し、それに該当するか否かの評価が必要となるものというべきである。
 …電気需給契約の内容となる契約種別の適用に当たり,高圧電力と業務用電力のいずれを適用すべきかについては,電気使用設備及び電気使用状況という客観的事実に基づいて一義的に明らかになるものではなく,その判断に当たっては,規約の文言の解釈及びそれに基づく評価が必要となるものであって,それらの解釈及び評価については様々な見解が成り立ちうるものであるから,本件業務は,権利義務に関して争いや疑義がある案件に関するものというべきである。

★電力会社との電気料金交渉代理非弁事件―東京地裁平成18年2月20日判決・判タ1250号250頁

3 裁判例,法務省文書を踏まえた実務的な考え方
(1)法務省は事件性必要説か?―令和5年法務省AI等文書再論
 繰り返し見て来たように,平成15年の法務省の「争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある」という見解を,どうやら裁判所は採用していないようです。では,この法務省の見解に沿っていれば,少なくとも刑事事件として起訴されないのかな?と思いきや,そうともいえません。平成22年の最高裁判決は刑事事件であり,被告人は法務省の見解を引用したのに有罪です。これは実務上看過できません。
 そこで改めて令和5年法務省AI等文書を見てみましょう。

…同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられ、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。その上で、
(1)例えば、取引当事者間で紛争が生じた後に、当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合には、法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものとして「事件性」が認められることから、このような場合の契約書等の作成について本件サービスを提供するときには、「その他一般の法律事件」に該当し得ると考えられる。
(2)他方で、例えば、親子会社やグループ会社間において従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合や、継続的取引の基本となる契約を締結している会社間において特段の紛争なく当該基本契約に基づき従前同様の物品を調達する契約を締結する場合には、いわゆる「事件性」を認め難いことが通常と考えられ、その契約関係を明らかにするために契約書等を作成する場合に本件サービスを提供するときには、通常、「その他一般の法律事件」に該当せず、同条に違反しないと考えられる。
(3)もとより、上記(1)、(2)以外の場合であって、いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意しつつ、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して、「事件性」が判断されるべきものと考えられる。

AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について

 本文書は平成15年の見解のように,「争いや疑義が具体化又顕在化している必要がある」という意味では事件性要件必要説をいっていません。「法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するもの」としており,「具体化又は健在化」という言葉を避けている点でトーンダウンしているようにも見えます。また,令和5年法務省AI等文書はあくまで企業間の取引に関する(AI等による)契約書チェックサービスの適法性を検討しているもので,「親子会社やグループ会社間において」「親子会社やグループ会社間において」「いわゆる企業法務委において」等と前置きがあります。


(2)実務上の留意点
 そうしてみると,令和5年法務省AI等文書の記載は必ずしも裁判例の潮流とも相反していないように思います。すなわち,令和5年法務省AI等文書は,「いわゆる企業法務において」「通常の業務に伴う契約の締結」に弁護士でない者が介在することはよい,といいます(ただし裁判所がそういうとも限らない)。他方,一方当事者が個人である場合において,既存の契約の変更,消滅を代行するような業務は,近時の(少なくとも民事の)裁判例は非弁行為と認定しています。新しいビジネスを検討するにあたっては,このような視点を持つとよろしいかと思います。
 蛇足ですが,企業間や大学との契約交渉において「コンサルタント」と称する人が出てきたりします。令和5年法務省AI等文書によれば,これはどうやら適法といえそうです。他方,一方当事者が個人で,契約の消滅を目的とするいわゆる「退職代行サービス」は,(少なくとも前掲東京地裁平成28年7月25日判決を前提とすると)かなり危ない橋を渡っているように見えます。
 このように,消費者保護法的な視点で弁護士法72条を乱暴に解釈すると,企業間の取引においては非弁護士を介在させてもよいが,それによって企業が損害を被っても法は救済しない,ということかもしれません。

※令和5年12月12日 福岡地裁令和3年12月7日判決に関する記述を追記。

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