【本の紹介】
加藤俊徳『脳が知っている 怒らないコツ』(かんき出版・平成28年)
交渉事は怒った方が負け。
無茶なことをいったり,挑発してくる相手に対しても,冷静に解決策を探すため,アンガーマネジメントは欠かせません。
本書は医学博士である著者が,脳の機能から怒りのメカニズムとその向き合い方について書いています。
「キレる!」からのつながりで,”怒り”について考えます。
「怒りを表すのは,甘えである。
…人は,怒る相手に対して,基本的に『この相手なら,怒っても許される』と思っています。怒っていい相手だと無意識に思っているのです。
…結局のところ,相手を思いやることなく,思わず怒りを露わにする人というのは,未熟で,相手に甘えている人なのです。」(同書63頁から64頁)
「怒りは,『自分は困っている』というサイン…
この視線を,怒っている人に対して向けるだけでいいのです。『ああ,この人は困っているんだな』と考えるだけで,怒鳴っている相手に対して冷静になることができます。」(同書93頁)
「怒れる相手に対して,他者が働かせることができる理性。
それは『怒りに同調しない』という『思いやり』ではないか。」(同書111頁)
例えば駐車場で車をぶつけられて,ものすごく怒る人と,そうでもない人といます。
”金持ち喧嘩せず”という言葉もありますが,怒る人は余裕のない,困っている人です。スマートなのはどちらか,です。
「ウソをつかれたときは,『言』より『動』に注目する
世の中には平気でウソをつく人がいます。
…このときに感じる怒りは,脳的に見ると,『言っていることと,やっていること,どっちが事実か理解できない』と,思考が答えを求めて脳内を堂々巡りしていることが原因で生じます。
このときに有効なのが,相手の言動のうち,『言』ではなく『動』に注目する,というやり方です。不可抗力でない場合,後づけできる『言』は『動』に対する言い訳でしかないからです。
『具合が悪いので,家で休む』と言っていた人が日焼けしていたら,少なくとも一日中家で休んでいたわけではないことは事実です。
『もう絶対に浮気はしない』と言っていたのに,また浮気をしたのなら,やっぱり『浮気をした』という行動こそが事実なのです。」(同書114頁から115頁)
これは弁護士が証人尋問で使うテクニックです。
証人の行動を細かく1つ1つ聞いていき,口では反対の事実を述べていても,いつのまにか語るに落ちている,というやつです。
「『感情』ではなく,『勘定』で動く」(同書159頁)
「相手がしてくれたことは,すべてプラスにとる」(同書163頁)
冷たい話ですが,私は他人にあまり期待しません。
期待すると,他人の働きがそれに満たないと怒っちゃいますよね。逆に,期待していないのにやってくれたことに対しては,感謝しかない。
特に,仕事で部下に怒るなんて無駄なこと,と思うわけです。
ちょうど出口先生も似たようなことを言ってました。