水野学『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版・平成26年)
水野学先生の”センス”に関する本です。
センスとは知識の集積である。これが僕の考えです。(74頁)…
過去を知って知識を蓄えることと,未来を予測することは,一見すると矛盾しているように感じます。しかし,僕の中でこの二つは明確につながっています。知識に基づいて予測することが,センスだと考えているのです。(86頁)
同感です。
法律家が学生の頃からずっと訓練しているのは,法律の条文を具体的な事案に当てはめるプロセスです。とにかくたくさん裁判例を読むんです。
そうすると,例えばニュースで話題になる事件の結末がだいたい予想できます。未来予知にも似た予測がある程度できるのは法律家の特殊スキルかもしれません。
これは当たり前の話で,過去に似たような裁判例がたいてい頭に入っていますから,「あの裁判例と似てるよね」ということがいえます。これは普段の法律相談でやっていることと同じですね。
センスは知識です。
たくさん勉強すれば,実はセンスが手に入ります。「量は質に転化する」ともいいます。
そのために絶えず勉強を続けなければなりません。
効率よく知識を増やす三つのコツ
①王道から解いていく
最初に「王道のもの」は何か,というところから紐解いていきましょう。…
言い換えれば,王道のものはすでに「最適化されている」と言えます。…②今,流行しているものを知る
王道をおさえたら,流行のものについて知識収集に着手しましょう。王道の真逆です。
流行しているものの多くはたいてい,一過性のもの。しかし,王道と流行のものの両方を知っておくことで,知識の幅を一気に広げられます。
流行を知る手立てとして最も効率がいいのは,雑誌。…③「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる。
これは知識を集めるというより,分析したり解釈したりすることで,自分なりの知識に精製するというプロセスです。
つまりこれは勉強するときの最短ルートです。
業界で無視されている無駄知識を習得して意味はありませんから,「①王道から解いていく」。また,判例雑誌を欠かさずチェックして「②今,流行しているものを知る」。
最後に,類似する裁判例を並べて読んで,どこが同じでどこが違うのか,「③「共通項」や「一定のルール」がないか」自分なりに研究するのです。