東京地裁平成30年9月13日判決・裁判所Web
【事案の概要】
Xは,「A」という筆名によって,イラストレーターとして活動している者である。Yは「ニュースちゃんねる」と題するウェブサイト(以下「本件サイト」という。)の運営に関与する者である。本件サイトは,主に他のウェブサイトに掲載されている文章や画像を転載するというものである。
本件は,Xが,Yに対し,Xが著作権を有するイラスト3点をYがその運営する本件サイトに掲載した行為は上記各イラストについてのXの送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害するものであると主張して,不法行為に基づき,損害賠償金等の支払を求める事案である。30万円認容。
【判 旨】
「…Yは形式的にも実質的にも本件サイトの運営において重要な役割を担っていたというべきであるから,少なくとも,本件記事の投稿等について共同不法行為に基づく法的責任を負う立場にあったものと認められる。」
「…Yは,Xが著作権を有する本件各イラストの本件サイトへの掲載によって本件各イラストに係るXの送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害し,また,…少なくとも上記侵害についてのYの過失が認められるから,Xは,Yに対し,送信可能化権侵害の不法行為に基づき著作権法114条3項により本件各イラストの著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の損害賠償金の支払を求めることができる。
…本件各イラストは,一つのテーマをめぐる複数の個別のイラストからなり,他人を笑わせる要素も含まれているもので,カラーで描かれた漫画に準じる部分があるとも理解できることや,漫画をウェブサイトに掲載するに当たっては一定の掲載期間を前提とした使用料が定められていることなどの事情を総合的に勘案すれば,Xが本件各イラストの使用に対し受けるべき金額は,イラスト1点につき1年当たり3万円とするのが相当である。
そして,…本件各イラストは平成26年8月3日から平成29年6月8日まで本件サイトに無断で転載されていた事実が認められることから,Xが本件各イラストの使用に対し受けるべき金額は合計27万円(イラスト1点につき1年当たりの使用料3万円×イラスト3点×掲載期間3年分)となる。また,本件における弁護士費用相当額としては3万円もって相当と認める。」
【コメント】
画像検索等で適当に探してきた画像を利用することがあるかもしれません。私的使用(著作権法30条1項)の範囲といえる限度であれば問題ありませんが,無許諾で,例えばプレゼンの資料に使ったり,SNS上で拡散したりすると,簡単に著作権侵害になってしまいます。
本件は,結論だけ見れば30万円という額の賠償です。しかし,インターネットにおける著作権のリテラシーを高く持っておかないと,訴訟のリスクがあることを警鐘する裁判例といえるでしょう。