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アダルト動画サイト事件・大阪高裁平成30年9月11日判決

大阪高裁平成30年9月11日判決・裁判所Web

【事案の概要】
Aは,米国にサーバーを設置してアダルトサイト「D動画」を運営する者である。同サイトにわいせつ動画をアップロードした者が逮捕され,Aも共謀共同正犯として起訴された。一審はAを有罪としたため,Aが控訴。控訴棄却。

【判 旨】
「被告人らは,本件以前から,アメリカ合衆国の法律では問題がないことからDで投稿を許可してきた無修正のアダルト動画について,複数の弁護士から,日本国内では刑事上違法と評価される可能性があると指摘されていたにもかかわらず,…無修正わいせつ動画の配信を許容する方針を変更することなく,徹底していたといえる。
 …被告人らは,D動画アダルトやDライブアダルトにおいて相当数の無修正わいせつ動画が配信されることを認識した上で,D社やサーバが米国にあるとの理由から無修正わいせつ動画の投稿・配信を許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維持・増加させようとして,D動画アダルトやDライブアダルトを管理・運営していた。」
「所論指摘の前記Winny事件最高裁決定は,開発途上のファイル共有ソフト(Winny)をインターネットを通じて不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めていた被告人が,同ソフトを入手した正犯者がこれを利用して行った著作権法違反の幇助罪に問われたという事案において,同ソフトの提供行為に幇助犯が成立するための要件の一環として,…一般論を示した上で,ネットワーク上に認められた同ソフトを利用しての著作権侵害のファイル数の割合も参考にしつつ,事案に即した具体的判断を示したものにとどまる。当該被告人は,ソフトの公開,提供に当たって,当該ソフトがどのように利用されるかについて関知できる立場にあったわけではないし,利用者に対し,著作権侵害のためにソフトを利用することがないよう警告を発していたなどという事情があるのに対し,被告人ら…においては,現にその管理・運営するウェブサイトに多数の無修正わいせつ動画が投稿・配信されていることを認識し,しかも,管理者としてこれを制限することができるにもかかわらず,その投稿・配信を許容し,これを利用して利益を上げる目的で管理・運営していたのであるから,本件は,Winny事件とは事案が異なり,投稿等の全体のうちで違法なものが例外的とはいえない範囲を占めていたかどうかといった,同事件におけるのと同様の事情を特に問題とするまでもなく,被告人ら及びEの故意を認定することができるというべきである。」

【コメント】
 わいせつな動画を共有するサイトを積極的に管理し,収益を得ていると,たとえサーバーが米国にあったとしても,わが国で罪に問われます。

 弁護人がWinny事件を引用して控訴した点は,個人的にはセンスがいいなと思いました。Winny事件では,管理者が違法な用途に使わないように警告を発していた,収益を得ていなかった(無償)等の事情がありました。しかし,収益を得る目的で,積極的にわいせつ動画のサイトを管理していた本件では,事案が異なるということです。

 Winny事件の1つの読み方を判示した裁判例としても,興味深く,ご紹介する次第です。

Winny事件・最高裁平成23年12月19日判決

 

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