法律ABC

フランク三浦事件・知財高裁平成28年4月12日判決

知財高裁平成28年4月12日判決
(1)事案の概要
 高級時計であるフランク・ミュラーを販売する「エフエムティーエム ディストリービューション リミテッド」(以下「フランク・ミュラー側」といいます。)が,『フランク三浦』の登録商標を持つ株式会社ディンクス(以下「フランク三浦側」といいます。)に対し,『フランク三浦』は引用商標『フランク ミュラー』『FRANCK MULLER』等に類似していること等を理由に,本件商標『フランク三浦』の無効審判を求めた(以下,二重括弧内は商標を表します)。
 第一審に相当する特許庁は,『フランク三浦』は『フランク ミュラー』等と称呼・観念において類似すること,両者が誤認混同を生ずること等を理由として,本件商標『フランク三浦』の無効審判をした。
 これに対し,フランク三浦側は当該無効審判の取り消しを求めて,第二審に相当する知財高裁に提訴したのが本件である。
(2)判決要旨
ア 本件商標と引用商標の類否について
 『フランク三浦』と『フランク ミュラー』は,称呼において類似するが,両者は「その外観において明確に区別し得る。」『フランク三浦』からは「日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し,」『フランク ミュラー』「からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから,両者は観念において大きく相違する。」
 同様に,『フランク三浦』と『FRANCK MULLER』の「称呼は類似するものの,観念においては大きく相違する。そして,…その外観において明確に識別し得る。」
イ 検討
フランク・ミュラー側「使用商標は, 外国ブランドである被告商品を示すものとして周知であり,本件商標の指定商品は被告商品と,その性質,用途,目的において関連し,本件商標の指定商品と被告商品とでは,商品の取引者及び需要者は共通するものである。しかしながら,他方で,本件商標と被告使用商標とは,生じる称呼は類似するものの,外観及び観念が相違し,かつ,…本件商標の指定商品において,称呼のみによって商標を識別し,商品の出所を判別するものとはいえないものである。かえって,…指定商品のうちの「時計」については,商品の出所を識別するに当たり,商標の外観及び観念も重視されるものと認められ,その余の指定商品についても,時計と性質,用途,目的において関連するのであるから,これと異なるものではない。…本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としても,本件商標を上記指定商品に使用したときに,当該商品が被告又は被告と一定の緊密な営業上の関係若しくは被告と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。」

(3)コメント
 商標(ロゴマーク)が類似しているか否かは,外観,称呼,観念の3点を総合考慮して決せられます。この点,『フランク三浦』と『フランク ミュラー』ないし『FRANCK MULLER』とは,似ていないし,消費者が販売元等を誤認混同するおそれはない,という指摘は判決のとおりでしょう。

 ただ,『フランク三浦』の時計はフランク ミュラーのいわゆるパロディ商品でしょう。フランク ミュラー側は,『フランク三浦』が『フランク ミュラー』にフリーライド(タダ乗り)している,と主張してきました。しかし,このフリーライドの問題は,商標法上の類似問題とは切り離して考える,というのが本判決の考えです。
 

 ところで,最近ですとコメダ珈琲事件で東京地裁がコメダ珈琲のブランドイメージを重視して,不正競争防止法に基づく差止めを認めました。

コメダ珈琲事件

 フランク ミュラー側は今後,不正競争防止法で勝負する可能性があるでしょう。

※この論点について,判決が出ました(平成30年11月19日追記)

マリカー事件・東京地裁平成30年9月27日判決

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